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『風影を殺せ』


それはリーが暗部となってから初めて与えられた『単独』でのSランク任務だった。






   すばらしい日々






通い慣れているとはいえ砂隠れの里への道のりは決して楽なものではない。気分の沈む時は殊更それが辛く感じられる。
見渡せど延々と広がるばかりの砂漠は果てが無い様に感じるし、容赦なく降り注ぐ太陽の光も、逃げ場の無い熱を孕む乾ききった砂も、重過ぎる任務を背負ったリーを内側と外側の両方から痛めつけるばかりだ。
こんな灼熱に中てられっ放しでまともな思考が働くわけがない。もう二日間もこうして熱砂に焼かれている。
いや、例え真逆の状況だったとしても、リーに冷静な考えを導き出させる事など不可能だ。


風影を殺す。
それは即ち己の恋人の命を奪えという絶望的な命令である。
あと一日…リーの脚ならば実質あと数時間足らずで最期の逢瀬が果たされてしまう。


……ボクはどうすれば…


決まっている。火影の言う事は絶対だ。必ず果たさねばならない任務だと理解している。
そしてこれは、ロック・リーにしか成し得ない任務だと言う事も自負していた。
五代目風影・我愛羅はリーの前でだけ砂の鎧を脱ぎ捨て、真実彼の素肌でリーの全てを愛する。
その時ばかりは他里の長も一人の男になるのだ。


一年に数えるほどしか会うことの叶わない恋人の事を想うと胸が高鳴り、微熱にも似た昂揚感に包まれるというのに、それと同時にまるで氷塊を飲み込まされたように急速に冷え切っても行く胸の内に気が狂いそうになる。
会ったが最後、彼の命をこの手で奪わなければならないなんて。
どうかしている。
こんな任務を火影に依頼した者も、受けた自分も…


やがて、さくさくと砂を踏みしめる自身の足音しか聞こえなかった世界に一陣の風が吹き、その風に乗って微かに他の音が耳に届くと、いつの間にか俯いていた顔を上げ、遥か前方を見渡す。
「里が……見えてきました…」
己の良過ぎる視力を呪い、リーは誰に聞かせるでもなく小さく呟いていた。
今だけはこれが蜃気楼の見せる虚しい幻であればいいのにと願いながら。


 * * * * * *


我愛羅には『まとまって取れた休日を利用して会いに行く』と事前に連絡を入れてあり、里に入る際も一般の旅行客を装ったリーは、風影の執務室ではなく、我愛羅の所有する私室で彼を待った。
旅の汚れを落とし頭をすっきりとさせ、これから行うべき事への覚悟を決める。
いつも通り腕に巻いてある包帯に忍ばせた特製の細い千本。
これには綱手が調合した毒薬が塗り込めてある。
情事の最中…曝け出された我愛羅の肌をこれで一突きする。ただそれだけでいい。
深く刺す必要はない。もとより痕跡を残しては不味いのだから、薄い皮膚一枚突き破れば猛毒が瞬時に身体中を駆け巡り彼を死に至らしめる。
痛みは無く、せいぜい蚊に刺された程度のものだと綱手は言っていた。
そんな気休めにもならない言葉でも、今は縋るしかない。


明り取りの小さな窓から見える里の景色が眩しい午後から夕闇へと移ろう頃、リーの耳に硬質な足音が届いた。
それは公の場で何度か目にした事のある颯爽とした中にも優雅さを備えた足取りではなく、どこか忙しなく聞こえ、彼が一刻も早く自分に会いたいと思ってくれての事だろうかと、リーの胸を甘くさせる。
こんな状況だというのに場違いな感情に包まれながら、リーもまた久しく会っていなかった恋人を迎えようと立ち上がる。
そしてノックもなく開け放たれた扉の前には肩で息をする我愛羅が居た。


「お久し振りです、風影様。こうしてまたお会い出来てとても嬉しいです」
「…………」
再会の挨拶は公的に言えば無難、二人の間柄と現状を考慮に入れて言うならばとても色気のないものだった。が、リーにとっては飾らない本心からの言葉であるのに対し、我愛羅は何も言わず無表情のままリーを見つめている。
「…風影様?」
沈黙の意味を問うように呼びかける声はどこか楽しげで、我愛羅はあからさまに眉間を寄せた。
「……言った筈だ。二人きりの時は名前で呼べと」
尊大な態度で拗ねているらしいその希望通りの反応に、リーは花が綻ぶ様に笑みを深める。
「…すみません。ちゃんと覚えていますよ。ですが、ボクはキミに怒って欲しかったんです」
「…………」
悪びれもせず返される言葉に何を求められているか分からない我愛羅ではない。
が、それに甘く応えられるほど器用でもなかった。
「……何を、確かめる必要がある?」
不機嫌な声と表情は恋人を年相応の青年に戻し、リーの胸を甘く痛ませる。
「キミがボクを……まだ好きでいてくれてるのか知りた…」
続く言葉は強く腕を引かれた所為で途切れ、縮まった互いの距離と突き刺さるような視線に射竦められて飲み込むに留まった。
リーを腕の中に閉じ込めた我愛羅は苛立ちを隠そうともしない唸るような低い声で問う。
「…何度も言わせたいのか」
照れている、というより焦れているのが我愛羅の正しい心情で、勿論リーにだってそんなことは分かっている。
分かっているのに、今はどうしても言葉が欲しかった。
こんな時だから……と心の内で言い訳をして、ゆるく微笑んで見せる。
「はい。許されるのなら、何度でも。…教えてくれますか?我愛羅くん」
「好きか、などと……」
吐き捨てるように苦々しく呟いた後、我愛羅は腕の中の細い身体をまるで抱き潰したいかのような力で掻き抱く。
「…っ」
瞬間、鋭く息を呑んで痛みに耐えたリーはその容赦のなさに比例するであろう彼の気持ちを自身の身体でもって強く実感し、同時に甘く痺れてゆく感情のまま利き手だけを上げ広い背にゆったりと添わせた。
「……そんな生易しい言葉では片付かん」
背に感じる相手の手からほのかな体温が伝わり、それが手荒い所業を許容されているのだと無言で教え、拘束は更に力を増し、我愛羅は乞われるままに本心を曝け出す。
「俺の物になれと言っているのにいつまで経っても聞き入れないお前が憎い。手に入らないのなら殺してでも傍に置きたいぐらい………愛している」
乱暴な言葉を吐くのとは裏腹に酷く優しい手つきで髪を撫で、指を絡ませる。時折指の背で頬を擽るのそのやり方は、リーが大切で可愛がりたくて仕方ないのだと教えた。
次第に緩くなる拘束にゆっくりと我愛羅を見上げ、互いの視線が絡まる頃にはどちらからともなく唇を触れ合わせていた。


深く交わり合う唇から漏れ出る湿った音に羞恥よりも官能が勝り、もっと深く彼の舌を誘おうと口を開きながら、リーはそっと震える瞼を押し上げ、ぼんやりと霞む視界の中に恋人の直向きな表情を見つけて再び固く瞳を閉ざした。
口内で這い回る我愛羅の舌は貪欲で、上顎や歯の裏、なめらかな頬の内側や喉の奥までも届き得る箇所全てを味わい尽くそうとする。
呼吸もままならない濃厚な口付けは、これから始まる情事を思わせ、リーは恐れにも似た期待に身体を慄かせて、離れまいと我愛羅の背をしっかりと抱きしめた。
「…っん、ぅ…」
「……ふっ、」
混じり合う互いの唾液が唇の端から零れ、濡れた軌道を描きながらリーの細い顎を伝い落ちて行くさまを、我愛羅は薄く目を開いて見つめていた。
激しく口内を貪りながらも両手で艶やかな髪の感触を愉しむよう混ぜ返し、乱れた髪の間から覗く白い耳朶を擽ったところでようやく口付けを解く。
真っ赤に熟れた唇であえかな吐息を繰り返す恋人のさまを愛しげに見つめ、再び引き寄せられる様に唇を寄せると、今度はそっと重ねて柔らかな肉を食んだ。


大きな掌が髪を撫で頬を包み、肌を求める指が項を辿る。
リーの愛用する身体にフィットしたその着衣は、後ろファスナー仕立てで脱がし易く、情事の際には便利なのが我愛羅の気に入りだ。
つまみを一息に引き下げ肩を剥けばあっさりと肌が曝け出される。
我愛羅は現れた健やかで美しい肌に震い付き、待ち焦がれた日々を埋めるべく身体全部で求めた。
綺麗に浮き出た鎖骨を唇と舌で辿り、甘く歯を立てながらも手と指は休み無く敏感な箇所を這い、リーの官能を次々と目覚めさせて行く。
与えられる丁寧な愛撫の一つ一つを享受し、震えながらその身を擡げ始めた雄の芯は、自由にならない着衣の中で身悶えている。
こんな時ばかりは身体にフィットし過ぎて窮屈に感じるガイスーツから解放されたくて、リーは身を捩った。
「……苦しいのか」
薄い生地越しに太腿を撫で擦っていた我愛羅は尋ねるというよりも見たままを呟き、焦らす事無く腰の辺りでわだかまっていた着衣を下着ごと剥いでやる。
「あ…っ!」
勢いよく引き下ろされた所為で羞恥を感じる間もなかったが、布に擦れ撓んだ花芯はたったそれだけの事にすら敏感に反応してリーを甘く苛む。
しっとりと汗ばみ、込み上げる熱情に耐え切れず本能のまま腰をくねらせ、浅く早い呼吸を繰り返しながら時折堪え切れない声を漏らして腕にしがみ付いてくる姿に、ごくりと我愛羅の喉が上下した。
手慰みに触れ、先端を指先で軽くくじいてやれば、すぐにじわりと蜜を滲ませる。快楽に従順な身体。
我愛羅は自分がそのようにリーの身体を造り替えたのだという自負から唇の端を微かに上げていた。
「もう、こんなにして……」
「ひぁ…っ!」
「俺を誘っているのか?」
「…ち、がっ、」
「違う?では何だ」
「んっ!ぃ、あ…っ、だめっ…」
「…拒むな。優しくして欲しいなら強請ってみせろ。そうでないなら……どうしてやろうな?」
普段の無表情でどこまでもストイックな彼を裏切る凄絶な秋波と、羞恥を煽る言葉に追い詰められ、リーは白い胸を喘がせて我愛羅の視線から逃れたいように目を伏せた。
部屋の中央で立ったままあられもなく肌を曝され、局部を屹立させている自分の姿にいたたまれず俯いてしまうが、顎を取られ、逃がさんとばかりに顔を引き上げられて、無理矢理視線が絡まるよう瞳を覗き込まれる。
「……言ってみろ」
「…っ」
どこか愉しげな眼差しが悔しくて、思わずリーは唇をギュッと噛んで挑み返すような目できつく相手を見つめ返す。


目許も頬も真っ赤にして潤んだ瞳を向けられても………可愛いだけだがな。


そう思った我愛羅の内心など知らないリーは意を決したように小さく息を呑むと、目を逸らさないまま手を後ろへ回し、緊張と興奮に震える指で双丘を押し開き秘所を露わにした。
「……我愛羅、くん…」
戸惑いを隠しきれない声で名を呼び、羞恥で挫けそうになる気持ちを奮い立たせるよう大きく息を吸い込む。
「っ、ここ、もっ……、触って、下さい…っ」
意地っ張りで頑固な一面も持つ年上の恋人の、多分これが今の時点で出来る精一杯の懇願だと理解して、リーの手の上から打ち震えている白い臀部を引き寄せ、
「いいだろう」
そう満足気に浅く頷き、片方の口許だけ引き上げて淫猥に笑んだ。


 * * * * * *


我愛羅はリーの待つ私室へ向かう前にカンクロウから受け取っていた媚薬を、そっと上着の内から取り出した。
薬とカラクリにかけては今や里で彼の右に出る者無しとまで言わしめる兄の調合したそれは、我愛羅の要望を全て叶えたものに仕上がっている筈だ。
『媚薬』といっても怪しげな効力は一切無い。
ただ、塗り込まれた箇所の『痛み』を消し去り、筋肉の伸縮を促し、潤いが長持ちしてよく滑るように……とは頼んであるのだが。
リーに関与するものに対しては許容の幅が極端に狭い我愛羅は、自分が施した以上の快楽を薬の力で引き出させる事を好しとしない。 だが、自分を受け入れる際にリーが味わう苦痛は和らげてやりたかった。
逢瀬の時間が少な過ぎる所為もあり、どうしても性急になってしまうのを律する事が出来ない己の不甲斐無さを薬に頼るのは本意ではないが、この際自分の矜持は捨て置く。
いち早くリーの固い蕾を解し、少しでも長く交わっていたいのだ。


人肌に温まった粘性の軟膏をたっぷりと纏わせた指で、リーの秘められた入り口を慎重に辿る。
慎ましく窄まったそこへ粘液を塗りつけながら、ぬめる指先をゆっくりと進入させるにつれ、その常に無い滑らかさに舌を巻く。
「…っ!」
傷みを予感して咄嗟に身を固くしていたリーを裏切り、蕾は待ち侘びていたかのように我愛羅の指をすんなりと迎え入れた。
粘液にまみれた縁は指を離すまいと食い締め、その内壁は彼を更に奥深くへ誘おと厭らしく蠢いてさえいる。


即効性だとは聞いていたが、まさかこれ程とは…


丁寧に隈無く薬を塗り広げられ、驚くほど短時間でとろとろに解された秘所は、我愛羅の訪れを待ってひくつき、溶け出して滴る粘液で濡れ光っている。
まるで浅い呼吸を繰り返す唇のようだ。
我愛羅はゴクリと喉を鳴らし、猛る自身を今すぐ突き入れたい欲求を抑え付ける。
まだ、リーの身体を愛し足りていなかった。


リーは少しも痛みを感じる事無く我愛羅の指を受け入れている自身に疑問を感じつつもそれを遥かに凌駕する快楽に飲み込まれ、早々に考える事を放棄していた。
ただ、もう其処に欲しくて欲しくて仕方が無かった。
我愛羅に触れられる何処も彼処も気持ちが良くて声を殺せない。


「此処を…」
「あ…っ、んぅ…」
「…こうされなければ、イけないだろう…?」
「ひぁああっ!」
開花を待つ間際まで解された蕾に我愛羅の長く節くれだった指が二本まとめて突き込まれた。
リーの秘められた性感帯を確実に捕らえた指は容赦なくそこを突き上げる。
「…アッ!…や…っ、め……」
感じ過ぎて辛いのか、リーは可哀相なぐらい取り乱し、涙を振り撒きながら頭を打ち震わせ、その度に艶やかな髪が濡れた頬に張り付く様は酷く悩ましい。
「い…ッ、ぁう、…っ、もっ…と…、……あッ!」
「もっと…欲しいか」
痛々しいまでに張り詰め震えながら蜜を零す花芯の根元を締め上げ飛沫を許さないくせに、残酷なほど優しい手つきでそれを扱きながら真っ赤に染まった耳朶を食み、熱い息と共に囁く。
「これだけでは……足りない筈だ。違うか?」
「…ッ!ァアアアッ!」
開ききった鈴口は射精を求めるあまり泣き濡れている。我愛羅は敏感になっているそこへ指先を押し当て、溢れて止まらない蜜液をしつこくくじるように指の腹で擦り上げた。
「や…っ!……お、ねがっ、…かせ、て…っ」
「まだだ。……まだ早い…」
容易く限界を訴え懇願するが聞き入れてやらない。
喘いで波打つ白い胸では小さな花芽がひっそりと勃ち上がり、触れられる時を待っており、その控えめな佇まいは我愛羅の中の凶暴性を酷く掻き立てた。
手を伸ばし摘み取ってしまいたいかのようにきつく摘まみ上げ、愛撫しやすいよう無理に引っ張っては指先を擦り合わせ、傷みを伴うほどの強さで扱き立てる。
「った…ぃ、アッ!……そんな、…しないで…っ」
「逃げるな」
きつい責め苦から逃げたがる身体を引き寄せ、縫い止める様腰を押し付け動きを封じ、立てた爪で何度も弾いてやる。
「やあぁっ!」
弄るにつれ色味を増してゆく果実に誘われるまま、我愛羅は唇を寄せ口に含み、舌で押し潰すように舐め回す。
「アアッ!アーーーッ!」
濡れた感触に包まれた胸の先の官能に耐え切れず弓なりに背を仰け反らせたリーは、知らず我愛羅の舌へと更に委ねてしまう。
芯を持ってピンと勃つ小さな乳首を舌と指で両方同時に愛してやりながら、眼前に広がる白い肌が美しい桜色に染め上がって行くのを感嘆の思いで見つめ、やがて所有の証をその唇で施して行く。
肌理の細かい白磁のような肌は我愛羅の思うがままに濃淡の花弁を其処彼処に散らされ、その度肌を刺す疼痛がますますリーを狂おしくさせるのだった。


目眩く与えられる愛撫に感情は高ぶり、リーの手が我愛羅の下腹へと伸ばされ、たどたどしくまさぐって求めるものを目指す。
我愛羅は何一つ着衣を乱していない。
けれど、内面の興奮を如実に表すように彼の欲望は細身のパンツを押し上げており、思わずリーは指先を慄かせた。
その様子をじっと見下ろしていた我愛羅は引っ込めようとした指を許さず、咄嗟に華奢な手首を掴んで自らの股間へと導いてやる。
「どうした…?」
「………あっ…」
手に手を重ね、羞恥に強張る指を開かせ着衣越しに握らせる。
熱く脈動しているのが分かるのだろう、リーはこれ以上無いぐらい頬を染め上げ、我愛羅の視線から逃れようと俯いた。
「止めるな。続けろ」
「我愛羅く…、」
「これが……欲しいんだろう?」
「…っ、」
この期に及んでまだ戸惑う臆病な所作が可愛くて意地悪をしているという自覚はあったが、先刻の言葉遊びの仕返しだ。
我愛羅は耳朶に唇を寄せ、舌先を耳の奥深くまで捻じ込み、まるで交接を思わせるやり方で抜き差しして、聴覚さえも篭絡しようとする。
「あ……っ、やっ!止め…っ」
弱い箇所を責められ息も絶え絶えに身悶え、許しを乞うが聞き入れられず、手に押し当てられた彼の昂りは更に質量を上げていく。
既に我愛羅にも焦らす余裕など無い。
欲しい気持ちは等しいのだと、解らせる為に言葉を紡ぐ。
熱い吐息と共に、ゆっくりと。低く、どこまでも甘く、官能を揺るがす声で。


「……感じさせてくれ」


それは、リーの中にあった理性を一片も残さず蕩かす極上の毒だった。

震える指先でなんとか前を寛げ、下着の中から取り出したものは、既に欲望を滲ませ腹につくほど反り返っていた。
リーは突きつけられた欲情の証に怯えよりも愛しさを募らせ、ゆっくりと我愛羅の前に跪く。
喉を反らせてそれに頬擦りし、包帯が巻かれたままの両手で支え持つと唇に含む。
舌で潤し、歯を立てないよう慎重に咽喉まで咥え込み、その圧倒的な質量のあまり苦しくて涙を滲ませ、それでも懸命に唇を窄ませては吸い上げ、口全体を使って扱きながら舌で奉仕する。
「………ッ、」
鋭く息を呑む我愛羅が愛しい。
リーは早く一つになりたいと強く願い、切なげに内股を擦り合わせては前を揺らし、疼く官能に耐えるのだった。


口淫をさせたまま、我愛羅は上半身の着衣を脱ぎ去った。
砂の鎧は部屋に足を踏み入れた瞬間に解除してある。
後は…
リーの腕の包帯と、自分のボトムだけ。
我愛羅は充分に濡れて育ちきった性器をリーの唇から引き抜くと、身を屈め、そのぽってりと腫れた赤い唇に口付けながら膝を折り、背と膝裏に手を回して細い身体を軽々と抱き上げた。
驚いて抵抗する間もなくベッドまで運ばれ、シーツの上にそっと横たえられたリーは、所謂『お姫さま抱っこ』をされた気恥ずかしさから相手に抗議の視線を向けたが、返される愛しげな眼差しと、頬をひと撫でされただけでいとも容易く懐柔されてしまう。
我愛羅は恭しく腕を取り、物語の騎士が姫にするような仕草で、包帯に巻かれたリーの手の甲へと唇を押し当てた。
そしてそのまま手を反し、内側に巻き込んである結び目を歯で噛んで解く。
「…っ!」


その瞬間、リーは夢から覚めたように思い出す。
我愛羅の命を奪う為の千本の存在を…


「……我愛羅くん…っ」
瞬時に腕を抜き取り彼を抱きしめる事で布が緩むのを阻止し、その背に両手で縋るようにしながら慣れた手で器用に包帯を結び直す。
「…どうした、」
リーが咄嗟に取った行動を別段怪しむ風でもなく、我愛羅は優しく宥めるような手付きで髪を撫で、背をあやす。


千本を隠した左手の方でなくて良かった…。もし我愛羅くんを傷付けてしまっていたら大変でした……


ホッと安堵の息を漏らすと同時にそんな自分に苦笑する。
こんな事で任務が全う出来る筈が無い。
否、
任務は全うしなくてはならない。
けれど…


我愛羅の肩口に顎を乗せ、余計な事を考え出そうとする思考を追い払うように固く目を閉ざす。彼のしっとりと汗ばみ始めた首筋へと鼻先を擦りつけ、熱っぽく唇を押し当てては肌を吸い、舌で汗を舐め取る。求めるように背を抱いていた手が太い首に縋り、強く引き付けながら身を起こしかけ、一気に体勢を逆転させる。
リーの息は乱れ、深い皺を刻んだシーツも乱れ、その上に仰向けに引き倒された我愛羅の少し伸びた赤い髪も広がって乱れて見えた。
我愛羅の両端に手を付き腰を高く上げ四つ這いに相手を跨いだリーは、淫らに腰を揺らめかせながら距離を推し量り、互いの屹立したものを摺り寄せる。
「お願いです…、もう…待てません…」
「……」
驚いた表情の(といってもいつもより若干瞳を大きく見開いている程度だが)我愛羅の視線を痛いぐらいに感じるが、もう本当に何もかもが限界だった。
迷いを断ち切る絶対的なものに支配されたかった。
「焦らさないで…、早、く…っ」
言葉にするのももどかしく、疼いてたまらない肛へと迎え入れたがって闇雲に腰を打ち振るう恋人の姿を前にしては冷静で居られる筈も無い。
我愛羅は冷たい美貌を情欲に歪ませ、一心にリーを見つめる眼差しは滾る熱を宿し、男の支配欲を剥き出しにしている。
腰を引き寄せ、その心地良い重みを身体全部で受け止めると、しっかりと抱き締めたまま身を反転させ、再びリーを組み敷いた。
「こちらの方がやり易いからな…」
意地悪く、たまらなく魅力的に笑んだその表情にリーは息を呑んで見惚れた。恋人の視線を受けながら、我愛羅はまるで見せ付けるようにリーの脚を大きく開かせ、自由にならない甘い敗北を味わわせてやる。
そして、綺麗に引き締まった細い足首を捧げ持ったまま頬へ寄せ、愛しげに頬擦りし、振り返るような仕草で尖った喉仏を曝してその白い甲へと唇を押し当てた。
「……ぁっ、」
惜しみなく注がれる愛情の前に、使命も理性も、何もかもが霞む。
我愛羅の事しか考えられなくなる。
「我愛……く、…っねが、い…、やく…っ!」
乞われるまでもなく、我愛羅はリーの脚を肩へ乗せると、ゆっくりと身を沈めて行き、
「……あいしてる」
心からの言葉を捧げ、深く、これ以上無い程深く繋がってもまだ足りずに、唇を塞いだ。


一番欲しかった所へようやく与えられた灼熱に内から焼かれた瞬間、リーは一際高く啼いて吐精していた。
身体中を駆け巡る充足感と胸に込み上げる切なさに涙を流しながら小刻みに身を震わせ、白濁を漏らし続ける。
「は…っ、ふ、ぁっ…、」
飛び散った生温かなそれは密着している我愛羅の腹部をも濡らし、リーの上へ滴り落ちた。
「…そんなに…、欲しかったのか?…こんなに直ぐ、出すとはな…」
リーが迎えた絶頂と共に引き絞る動きで性器を甘く苛んだ秘孔の締め付けに我愛羅は耐え、波をやり過ごしてからゆっくりと欲望のままに穿ち始める。
「ァアアアッ!…ま、だ…っ、だめっ…!」
「駄目…?そんな風には見えんが…」
極めたばかりの敏感な身体では快楽が大き過ぎて受け止めきれない。リーは涙を散らして懇願するが許されず我愛羅の為すがままに身体を開かされた。
緩やかな突き上げはやがて突き壊さんとする容赦の無いものへと変わり、リーは激しい交接音に耳を塞ぎたくなるような羞恥を感じたがそれも次第に薄れ、我愛羅の雄雄しい息遣いと自分では無いような艶めいた嬌声と、度を超えた快感が互いの世界の全てになる。
引き抜かれる熱に追い縋るよう内壁が絡みつき、食い締め、捲り上がりかけるのを待ってまた深く埋め込まれれば、再び痛いくらいに中心が張り詰めて行くのを感じた。
「……っあ、ぅ、ん…ッ、んぅっ!」
「声を殺すな。もっと、聞かせろ…っ」
未だ唇を噛んで耐えようと働く理性を奪い、何もかもを暴きたてようと我愛羅が深い抜き差しを繰り返せば、媚薬で傷みを消されているリーは純粋な快感だけを味わわされているせいで、雄の芯に触れられないまま今にも二度目の射精を迎えそうになっている。
「や…っ、ん!ぁっ、…ぁうぅう、あ!あっ!く、ふぅ…ッ」
「ッ、…そうだ、もっと…!」
「ひぁ……っ!アッ!アアッ!…いやぁっ!あッ、アアーーッ!」
「………クッ!」
リーの腰を指の跡が残るほど強く掴み、引き寄せ、彼を最も狂わせる場所へ激しく突き入れる。
何度も、何度も。
もはや唇を噛んで嬌声を堪える事など出来なくなったリーは、感じるままにはしたない声を上げ、自ら腰を揺らめかせ求めさえしていた。
狂乱の中で、使命を果たそうとする自分と、彼を愛しく大切に思う気持ちが激しくぶつかり合うが、楔を打ち込まれる毎に思考は千々に乱れ、我愛羅で一杯に満たされて行く。
他の事は全てが砂のように手の中をすり抜け、零れ落ちて行くように思えた。


リーの身体を思うが儘に翻弄し激情をぶつけながら、我愛羅は身の内で燻り続けている狂おしい想いがリーをも等しく焦がせばいいと願い、炎に等しい感情を吐露する。
「俺の物だ…。お前は全部、この俺の…っ」
「あうっ!…い、あっぁ…ッ、んッ!はぁ…っう」
「もう……離さない…!」
「……ア、ァッ…!がぁ…ら、く…っひぁ!…あッ、ゃ…っ!」
「待つだけの日々が、どれ程苦痛か……お前は、知らないだろう…?」


「俺は……、俺は時折、お前が愛しいのか、憎いのか……分からなくなる…っ」


それは、泣きたくなるような我愛羅の告白で、リーは押し寄せる彼への愛しさに呑み込まれ、感情のまま心が張り裂けそうに叫ぶのを聞いた。


彼を殺す?
無理だ。
だって、ボクは彼と生きたい。
これからの人生を、彼と生きて行きたい。
彼を……我愛羅を愛している。
何よりも、誰よりも……!


はっきりと自覚した刹那、リーはかつてない歓喜に包まれ、初めて心のままに彼の素肌に爪を立てた。守る物のない綺麗な皮膚が裂け、血が滲むのもかまわず思い切り我が儘に引っ掻いて、彼が自分のものであるという証を刻み付ける。
「アッ!ア、アァーーーーーーーーッ!」
「…ック、……ウッ…!」
我愛羅を食い締めた縁がぎゅっと窄まり、内壁が引き絞るように脈動した瞬間、圧倒的な質量にまで膨れ上がっていた性器が爆ぜ、我愛羅もまた熱い飛沫をその体内へと迸らせた。
階を上りつめ、目映い光の中に放り込まれた瞬間感じた思いは、リーが無意識の内に心の奥底へと隠し込んでいた、たった一つの無垢なる願い。
「ボクも……、キミを……」
言い掛けた言葉が声になる前にリーは意識を手放してしまった。けれど我愛羅には届いたようで、彼は柔らかな表情で確かに、微笑ったのだった。




 * * * * * *




……その頃。


火影室では渦高く積まれた依頼書の山に埋もれている綱手が苛立ち任せに目も通していないそれらを鷲掴み、目の前に立つガイへと差し出していた。
その意味するところを寸分違わず理解したガイは項垂れつつも丁寧に両手で受け取り「お受け致します…」と引き攣った笑みを浮かべてみせるものだから、綱手はフンと鼻を鳴らし、「生憎、人手不足でな」とイヤミを一つくれてやった。


「…ガイ。溺愛していた弟子を手放して、後悔してるんじゃないかい?」
「後悔などありません」
「強がりを言うんじゃないよ」
「…いいえ、本心です。……あいつも…そろそろ愛に生きて良い年齢だと思いましたので」
「フッ…。愛ねぇ。随分甘い事言うじゃないか。もしロック・リーが本当にあの依頼を遂行していたらどうする気だい?」
「有り得ません」
「そうかな。この私の…いや、火影の命だぞ。出来ないのなら初めから断わっているだろう」
「真意は解らずとも火影の命だからこそ受け、里を思ってかの地へ赴いたことでしょう。そしてあいつは…長い長い道のりを経て、自分にとっての正しい選択をしています」
「……だと良いがな」


事の真相はこうだ。


愛弟子の許されない恋路の成就を願うガイが『風影暗殺』というニセの依頼をし、綱手がそれをリーに命じた。
任務を受け、砂隠れの里へと向かうリーが取るであろう行動も結末もガイには全てお見通しだ。
例えリーが断わっていたとしても綱手に『感情論は捨てろ。これは任務だ』とゴリ押しをして貰うつもりだった。
名付けて、『我愛羅を暗殺出来ないならもう木ノ葉に帰って来るな!そっちで幸せにやってろ大作戦!』(…とガイは思っている)。
もう滅茶苦茶である。
二人が恋人同士であると言う事はどちらの里的にも周知の事実であるが、何せ立場とか世間体とか障害とか、とにかくなんやかんやと問題が多過ぎる。
そういうややこしい一切合切をえいやっ!と隅に追いやって多少…いや、かなり無理矢理にでも幸せにしてやりたかったのだ。
言わば、行き過ぎたガイの親心である。


やれやれと長い息を吐いた綱手は、腕を組んでガイを見上げた。
ガイはこちらを向いてはいたがその視線はどこか遠く(おそらくは砂隠れの里に居る愛弟子を思い描いているのだろう)両の目にこん盛りと浮かび上がる涙が表面張力ギリッギリを保っているのが痛々しいと言えば痛々しい。


「あいつは……、」
おもむろに口を開いたガイに、まだ語り足らんのかっ!と容赦なく裏拳を喰らわせたくなったが、そこは里長、優しさと思いやりを総動員して何とか堪え、聞いてやることにする。

「……リーは、今まで忍になること・忍でい続けることに必死過ぎました。勿論それが悪い事だとは思いませんし、私自身がそうであると自負しています。……が、リーは純粋過ぎるが故に視野が狭い。あの子はもっと……愛を知るべきだ」


あいつ、リー、あの子。
次々と変わる彼への呼称、そして語られるガイの熱い思慕に綱手は呆れ顔を作りつつも笑みの形に目を細めた。
弟子思いの男はまるで父親のような表情をしている。
「……ロック・リーはいい忍だ。体術だけなら今やお前をも凌ぐ、最高のな。ヤツの腕を買って暗部に引き入れたが……そうだな、潮時だったと思う事にする」
「はい」
誇らしげな声で答えるガイの両頬はすでに二つの滝と化している。
綱手は『うわぁ、暑っ苦しいな!』と眉を顰めそれを見なかった事としてガイから視線を外すと早々に記憶から抹消して、咳払いを一つした。
「将来のある有望な忍を失ったのは痛手だが…まぁいい。お前がその分大いに働けばいい」
「…はい!」
「当分はタダ働きだ。覚悟はいいな!」
「………は、…ぃ……」
「声が小さいっ!」
「はいぃいいいいっ!」


火影執務室にガイの悲痛な叫びが虚しく木霊するのだった…


 * * * * * *


ガイが去った後一人になった綱手は、暗部の資料の中からリーの物を抜き取った。
記載された細かな経歴ではなく、生真面目な表情でこちらを見ている顔写真を眺めていたら、過去に彼を手術した時の事を思い出し、吐息のような笑いが零れた。


「……幸せにな、ロック・リー」


写真の中の彼にはなむけの言葉を送ると片手で印を結び、リーのデータを一瞬にして灰に変えた。
手の平の上に小さな山を作った真っ白なそれを握り締め、窓辺へと歩み寄る。


ナルトはきっとロック・リーの不在を友として寂しく思うのだろうな……
兄弟のように仲良く汗と土にまみれて修行する姿を幾度か目にした事がある。
ナルトだけではない。彼と同じ時間を過ごした事のある者ならきっと例外なくそう思うのだろう。
そして、寂しさと同じぐらいの大きさで彼の幸せを願うに違いない。
ロック・リーは自ら望み、風影に望まれて、これからの人生を愛に生きるのだ…


己の結論に満足した綱手は開け放たれた窓から入り込む心地良い風に髪を好きにさせ、窓枠の外へと腕を伸ばし、握っていた手の平を空に向けゆっくりと解く。


澄み渡る青い空にまるで溶け込む様に灰は風に攫われ、霧散した。






             すばらしい日々 / 終








































あとがき↓
後書きというか言い訳というか蛇足というか…
要するにどうでもいい独り言です☆








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