緑溢れる自分の里とは全く異なる荒涼たる風景にリーは小さく口の端を上げる。どんな場所でも唯一の相手がいるとなれば輝いて見えるものだ。
リーは自然に顔が綻ぶのに気付くと咳払いをして真顔に戻す。一応は任務で来ているのだ。ただそれも言い渡した相手の表情を思い出すと居た堪れない気持ちになる。大っぴらにしていた心算は全く無いのに親しい人々にはすっかり知られていた。
中には渋い顔をする者も実は自分を気遣ってくれての事であると分かっているし、こっちが照れる程に応援してくれる者もあり、総じて公然の秘密状態で受け容れられていると言っていい。
そんなリーにS級任務を立て続けにこなした褒美として長期休暇が与えられ、その前日にリーでなくても済む任務をわざわざ回してくれたのだ。それは根が素直なリーにとって気恥ずかしさより嬉しさが勝つものだった。ただ任務を言い渡した後、更にその後の向こうでの逗留許可まで取り付けてくれた里長と幹部の含み笑いには流石に赤面せずにはいられなかったが。
リーは受け取った親書と許可証を確かめると砂隠れの里に足を踏み入れた。


風影の執務室に通されたリーは火影からの親書を手渡した。赤褐色の髪色の風影は親書に目を通すと、リーに向かい「ご苦労だった」と声をかけた。黙って頭を下げるリーに風影は続ける。
この後は休暇だそうだな。砂隠れでの逗留は許可したのだが、お前が予約した宿は手違いで満室になってしまったそうだ」
「は?え?」
思わぬ風影の言葉にリーは驚いて咄嗟に言葉が出ない。普通の旅行者ではないのだ。幾ら友好関係にあると言っても他の里の忍を在所不定で入れられる訳がない。
そして驚いているのはリーだけでも無かった。風影の姉兄を含む側近も呆気に取られている。そもそも観光地でもなく街道沿いにあるのでもない隠れ里で宿が数少なくても満室になるなど有り得ない。風影の真意を測りかねている側近の内、実姉であるテマリがハッと顔を上げ「が…」と名前を呼びかけたのだが、それを風影の淡々とした声が遮った。
「こちらの不手際だ。侘びと言っては何だが俺の私邸を使え」
「我愛羅君!」
「か、風影様!」
「我愛羅!」
その場にいる風影――我愛羅以外のほぼ全員がそれぞれの思いで声を上げる。しかし風影は全く動じず、
「任務なら宿舎に泊める。私事に風影の公舎は使わん。こいつは火影の親書を渡した時点で任務は終了し休暇に入っている。友人を私邸に招いて何の問題がある」
「……………」
明らかな詭弁も堂々と滔々と話されると反論出来なくなってしまうようで誰も口を挟めずにいると、
「異論はないな。リー、こいつに付いて行け」
どこからともなく小さな砂のつむじ風がリーの前に起きる。周りの反応が気になってリーが二の足を踏んでいると、
「行け。それとも送ってやらないと駄目か」
「いっ、いえっ。とんでもありませんっ。失礼します!」
そこまで厚顔になれずリーは大きく首を振るとそそくさと渦巻く砂について行こうとした。その背を追うように我愛羅が声をかける。
「夕食までに帰る。それまで家のものは好きに使っていていい」
「は、はいっ」
露骨な食事の誘いに顔を赤らめたリーは慌てて頷き、逃げるように風影の執務室から出て行った。


夕刻、日が落ちて1時間ほどで我愛羅は私邸に帰ってきた。漏れる明かりにフと視線が柔らかくなる。それから否応無く漂ってくる匂いをクンと嗅ぎ、思案気な表情になりながら戸を開けた。
「お帰りなさい、我愛羅君」
気配を消しはしないものの大した物音も立てずに入ったのを聞きつけて来たのは流石に木ノ葉でも有数の忍といったところだろうか。その事については我愛羅は一切驚きはしなかったが、
「何だ、その格好は」
三角巾を頭にしていつものスーツに似た色のエプロンを着てお玉を手にしているリーに眉根を寄せる。エプロンの下もガイスーツではなく淡い色の功夫服になっていた。
「夕食までに戻られると言っていたでしょう?日課のトレーニングも済んで時間が空いたものですからカレーを作って待っていました。前から我愛羅君に食べて頂きたかったんです」
「――――そうか」
「……カレー嫌いでしたか?」
我愛羅が置いた間に不安を覚えてリーが恐る恐る尋ねた時、戸を叩く音がした。我愛羅の家であるにも関わらず反射的にリーが「どうぞ」と答えてしまうと、数人の女性がにこやかに現れてあれよあれよと言う間に上がりこみ手にしていた皿をテーブルに並べて帰って行った。
「我愛羅君、これ……」
「お前が作っているとは思わなかったんだ」
テーブル狭しと並べられた料理を前にばつが悪そうに告げる我愛羅にリーは大きく首を振る。
「とんでもありません。僕が勝手にした事ですから気にしないで下さい。それにカレーは一晩寝かせた方がおいしくなるんです。カレーは明日にしましょう。――あ、明日もご一緒できれば、ですけれど」
「大丈夫だ」
「ではそうしましょう。あ、お風呂も沸いてるんですよ。食事の前に入られますか?」
「お前はどうした」
「僕はトレーニングの後に汗を流させてもらいましたから」
「……そうか」
頷くと我愛羅は踵を返してスタスタと廊下を歩いて行く。残されたリーは用意された料理を冷めない様にと動き始める。
「あれ…我愛羅君、ひょっとして……」
手を動かしながらふと浮かんだ考えにリーは顔に血を上らせた。
「な、何を考えているんでしょう、僕は」
顔の熱を払うようにブンブンと首を振り、リーは殊更に音を立てて食器を動かしていた。


女性たちが持って来たのは砂隠れの里の中で評判の料理屋のもので、もちろん予め我愛羅が頼んだものだ。私的な用向きと告げてはいたものの風影からの初めての注文という事で張り切りすぎたらしい。質、量共に大いにサービスしてくれていた。
「うーお腹一杯ですー」
食堂から居間に場所を移してリーが唸るように言う。木ノ葉とはかなり異なる料理が珍しく半分以上を食べてしまったのだ。砂漠地帯独特の茶を飲みながらソファに背中を預けている。
「残して構わなかったんだ」
「そんな、勿体無いですよ。ただあんまり美味しかったので君の分まで食べてしまっていたらすみません」
「いや、俺も食べ過ぎたぐらいだ」
食が細いというより興味のない我愛羅にとってはリーの健啖ぶりにつられて食べた方である。けれど食欲はかなり旺盛なガイやテンテンが側にいる―ネジは人並みだが―リーから見ると我愛羅の食事量は小鳥が食べるぐらいにしか思えない。
「それじゃあ大きくなれませんよ」
「俺が幾つになったと思っているんだ」
二人が出会ってそろそろ十年近くになる。二十代半ばに手が届こうかという所で成長期などとうに過ぎている。
「でも僕はこの間の健康診断で5mm身長が伸びてましたよ。それよりもう少し筋肉を付けたいんですよね」
日頃の鍛錬の賜物かリーの身長は師であるガイに迫るぐらいまで伸びたのだが、筋肉は持って産まれた質が異なるのか鋼のような肉体にはどうしてもなれないらしい。その分柔軟性に優れスピードも増していてもガイに心酔しているリーとしては理想にはまだまだ遠い事になってしまう。
「お前は今の状態がベストだ」
体格が劣るのを密かに気にしている我愛羅としてはこれ以上リーが逞しくなるのは実は歓迎できない。負ける気は微塵もしなくても。
「確かにネジにもサクラさんにもそう言われてます。あまり筋肉をつけるとスピードが落ちてしまいますし」
「抱き心地も悪くなる」
「なっ――――んっ、ん…」
しれっと付け足された台詞に頬を染めて言い返そうとしたリーは腕を引かれて開いていた口を塞がれた。唐突な行為に反射的に身体が逃げを打つのを意思で抑えてリーは我愛羅の口付けを受け入れる。粘膜の触れ合う湿った音が暫く続いた後、二人は唇を離して息をついた。至近距離に互いの顔があり、丸い目の潤みも白皙の面に注す血の色も余さず見て取れる。
「我愛羅君……」
沈黙に耐えかねてかリーが囁くように名を呼ぶと、我愛羅は引き寄せていた腕に今度は真逆のベクトルで力を加えた。弾みでソファの肘掛に頭をぶつけたリーが当たっている箇所をずらそうとして背けた顔を我愛羅は強引に顎を捉えて自分の方へ向かせる。リーは太い眉を下げつつも逆らわず素直に我愛羅の体重を受け止めた。
けれども唇を合わせながら我愛羅の手が服に掛かると、やんわりとしつつも断固とした力でリーはその手を押さえた。そして焦れたような強い視線をぶつけて来る我愛羅に含羞に満ちた表情を向けて小さく言う。
「ここで、ですか?」
「…………」
言われた我愛羅は動きを止め、微かに眉間を寄せて部屋に目をやる。シンプルな居間は晃々と明かりが点りソファの前のテーブルにはまだ湯気を立てているカップが二つ並んでいる。どう贔屓目に見ても房事に及ぶ場所でも雰囲気でもない。我愛羅はさして周囲を気にしない性質ではあるが、ようやく叶った久々の逢瀬に焦る事はあるまいと思い直した。然るべき場所で充分に惑溺しようと素早く印を切る。
「我愛羅君?――わっ!」
一瞬にして砂塵に巻き込まれ、咄嗟に目を瞑り息を止めたリーは浮遊感を覚えるのと同時に上下左右の感覚を無くしてしまい、直ぐ側にいる筈の我愛羅に手を伸ばす。そして細い手首に触れたと思った途端、砂音が止んで背中の感触が変わっているのに気付いた。そっと目を開けると部屋の様子が変わっていて砂に運ばれたのだと分かる。部屋の明かりはついておらず窓からの月明かりが唯一の光源だった。背中を受け止める程よい弾力と包み込むような柔らかさは寝具でしかない。
「ここなら文句あるまい」
「君はせっかちで不精です」
嗜めるような言葉とは異なりリーが覆い被さるようにしている我愛羅の手をそっと取ると、すぐにそれは指を交差させる握りになる。
「会いたかったです」
素直に心情を吐露するリーに対し我愛羅は言葉を返さなかった。代わりに強く抱き締めた。


「――っあ、僕…もうっ……んんっ!」
「く―――っ」
酷く感じる場所を抉られてリーは堪らず吐精し、追いかけるように中に熱い迸り感じて大きく身体を震わせた。上がる息を落ち着かせようとしても不規則に身体のあちこちが痙攣しているのが分かる。やや不確かな視界の先には滅多に見れない薄く汗を浮かべた我愛羅がいる。いつも冷静な目が熱を孕んで原始的な欲求に塗れており、リーはそれが自分に向けられてるのだと感じると全身がそそけ立つのを止められなかった。連動するようにまだ男を迎え入れている場所がキュウッと締まる。
「ぁ――」
リーは自分を貫く剣が力を失っていない事に気付くと声と身体を震わせ、手慰みにか髪を撫でている我愛羅を見た。我愛羅は手は止めずにあるかなきかの笑みを浮かべ、
「そんな顔をしなくとも」
完全には萎えていない自身で中を掻き回す様に押し込んだ。
「がっ…我愛羅く、待っ――」
二人ともどちらかと言えば淡白な方で大抵交歓は一度で終わる。なので我愛羅が再び挑んできた事にリーは焦りを隠せず、また一度達して敏感になった身体の反応に慌てた。しかし身体に上手く力が入らず我愛羅の侵入を拒めない。
「そ…ダメっ、ですっ…あぁっ」
身体に見合った細身の我愛羅のモノは的確にリーの感じる部分を抉り否応にも性感を高めて行く。
「何故…駄目だ……」
「…だ、だって……君、んっ、明日も仕事…がっ……はぅ…」
「そんな事か」
「そんな事…ではっ……ありません――」
二人の関係を考える上でどうしても我愛羅の地位は無視できない。自分が来た途端に風影としての仕事が滞ってはまずいのだ。リーはそれを指摘したかったのだが、我愛羅の次の発言に言葉を失った。
「気にするな。俺も明日から休暇だ」
「えっ――が、我愛羅君、まさかっ…」
繋がっているのを一時忘れてリーが問い詰める。
「心配するな。前から決まっていた事だ」
リーの不安を感じ取って我愛羅は動きを止めると、乱れた前髪の間から現れた額に唇を落として告げた。
「ほ、本当ですか?」
「あぁ。だから余計な事は考えるな」
「……我愛羅君…」
「俺だけを感じていろ」
「はい――あ、あぅっ!ひぅ……っ」
頷いた途端に動きを再開されてリーは高い声を上げる。我愛羅はより深い交合を得るためにリーの足を持ち上げた。柔軟性の高いリーの身体は我愛羅の求めに自在に応じる事ができる。
「リー…もっとだ、もっと俺を……」
「が、我愛羅君…っ…あ、ん……き、来て、下さいっ…」
リーは手を伸ばして一回り小さな我愛羅の肩に手を回して引き寄せる。
「好き、好きです…っ」
「リー…」
拙い告白に溜まらず我愛羅はリーの唇を塞ぎ舌を絡めあいながら腰を蠢かせる。二人だけの部屋で秘めやかに熱く行為は続けられた。


久々の性交は任務とは全く異なる疲労感を呼んでリーはぐったりと身体をベッドに沈めていた。横では我愛羅がいつもの様に薄い表情でリーを見つめている。リーはそっと手を伸ばして我愛羅の手の上に重ねた。
「どうした」
「我愛羅君のお休みはどれくらいなんですか?」
「――三日だ」
「そうですか。えっと…お願いがあるんですが」
「言ってみろ」
「是非手合わせをお願い致します!」
思わず深いため息をつきながらも我愛羅は答えの代わりにリーの手を握り返した。



おわり







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いまいつばめ様のサイト、
金色蝙蝠さんの3万打ヒット企画でリクエストを受け付けていらっしゃったので、
ワタクシ、張り切って己の欲望に忠実なリクをしてきました☆←
リク内容。。。
数年先の設定で二人はすっかり大人(そして勿論恋人同士v)
風影・我愛羅の許へ長期休暇を得たリーが訪れ、暫しの甘い時間に溺れる二人…
ラブラブでイチャイチャで、出来れば年齢制限要素有り(!!)でお願いしたいですっ!!


……………………どこまでも恥知らずですみません……っ!!
う、埋めてくださ い …(今なら絶頂のまま逝ける!本望^q^)
でもっ!!
いまい様の我リーえっちが読みたかったんだ……!!
いまい様ファン&我リーファンなら分かりますよねっっっ!!!(クワッ)
私はすっごく良いリクエストをした!って、分かってくれますよねッ!!!←
まさにっ!!
我リーに餓えた心を満たして余りある甘々ラブラブの大洪水小説でございますv
アッーーーーー!!!!!幸せだなあ!!!!!(とてもいいえがお)


いまいつばめ様、禿げ散らかす勢いで萌え転がる素晴らしい我リー小説(しかもエロ有り!)を、
本当にどうもありがとうございました……ッ!!!!!(感涙)






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